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2022.12.8 基礎知識

新・事業承継税制とは?利用する要件、メリット・デメリットまとめ

新・事業承継税制とは?利用する要件、メリット・デメリットまとめ

最終更新日 2022年12月23日

新・事業承継税制とは「期限付き特例措置が設けられた事業承継」の呼び名です。期限付きで大幅に緩和された特例措置が利用できるのが特徴になります。しかし新・事業承継税制を活用するには期限が迫ってきているのが現状です。

ここでは新・事業承継税制を活用するか否かの判断材料となる要件・メリットやデメリットについて解説します。

新・事業承継税制を活用できる要件とは?

新・事業承継税制を活用できる要件とは?

新・事業承継税制を活用するためには、会社(認定対象会社)・先代経営者・後継者・その他株主からの贈与の4つの視点から要件を満たさなければなりません。活用する場合は、認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けて”特例承継計画”を作成し、2023年3月31日までに提出する必要があります。

また、提出した特例承継計画書にそって2027年12月31日までに実施しなければいけません。

そこで、自社がまず新・事業承継税制を活用するにはどのような要件に当てはまらなければならないのか、1つずつ解説しましょう。

先代経営者の要件

先代経営者に求められる要件は次の表の通りです。

要件備考
会社の代表だったことがある贈与時には代表を退任
一族で議決権が50%超相続・贈与の直前において
一族の中で筆頭株主相続・贈与の直前において
代表を退任退任する・もしくは退任している

会社(認定対象会社)

認定対象会社となる会社に求められる要件は次の表の通りです。

要件備考
承継法上の中小企業者特例有限会社及び持分会社は対象、医療法人は対象外
非上場会社中小企業といわれる会社はほぼ対象
資産管理会社に該当しない例えば、不動産賃貸業の会社は適用が難しい

また、対象となる承継法上の中小企業者とは次の表の通りです。また、資本金か従業員数のどちらかを満たせば良いことになっています。対象となる範囲は「株式会社・特例有限会社・合同会社・合資会社・合名会社・農業経営を営む法人です。

業種資本金従業員数
製造業3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
小売業5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
ゴム製品製造業(ただし、自動車や航空機用のタイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業は対象外)3億円以下900人以下
ソフトウェア業または情報処理サービス業3億円以下300人以下
旅館業5,000万円以下200人以下

後継者

後継者に求められる要件は次の表の通りです。

要件備考
会社の代表である
一族で議決権の50%超相続及び贈与直後いおいて
一族の中で筆頭株主相続及び贈与直後において(後継者が複数人の場合にはそれぞれが2位、3位に位置している。その上で、少なくとも総議決権数の10%を保有している。
特例承継計画に特例後継者として記載がある相続の場合は必要要件となる
相続の直前において役員相続の場合は必要要件となる(先代役員が70歳未満で亡くなった場合を除く)
18歳以上贈与の場合
役員就任後3年経過贈与の場合

その他株主からの贈与

その他株主からの贈与とは、先代経営者の妻や兄弟が株式を所有しているケースです。新制度では、このような後継者以外からの株式の後継者への贈与も対象となります。つまり、株式を新経営者に集約することも可能です。しかし、適用するためには先代経営者から後継者へ事業承継税制の適用をうけて贈与することが前提要件にあります。先代からの贈与が開始されてから、一定期間内に妻や兄弟から贈与を受けるという手順です。

新・事業承継税制を活用するメリット

新・事業承継税制を活用するメリット

経営者の交代は、後継者へ株式を譲ると引き継いだ側が贈与税もしくは相続税を納付しなければなりませんでした。今問題となっている「後継者問題」も新・事業承継税制を活用すれば解消できる可能性があります。例えば、先代経営者に後継者がおらず、血縁関係のない第三者に譲りたい場合も要件を満たせば、新・事業承継税制の活用が可能です。日本の中小企業に多い同族会社の経営を継続させるためにも有効と言えます。

新・事業承継税制を活用することで発生するデメリット

新・事業承継税制を活用することで発生するデメリット

将来発生する、経営者交代による贈与税や相続税の節税対策ができる反面、デメリットもあります。それは次の2つです。

  • 手続きが複雑
  • 特例承継計画の提出が必要

多くの人が良く知る「暦年贈与」とは全く異なるのが新・特例事業承継税制です。暦年贈与は、贈与のタイミングだけ注意が必要ですが、新・特例事業承継税制は計画書の提出が必要です。

なおかつ、要件を遵守出来ているか報告義務があります。例えば、中小企業の要件を満たすために従業員数を選択したのであれば、その従業員数を守らなければなりません。

新・事業承継税制の適用には検討が必要

新・事業承継税制の適用には検討が必要

暦年贈与で毎年少しずつ株式を移動させていた経営者も、新・事業承継税制を活用すれば一度に株式を贈与でき、経営権も後継者に移せます。そのため、将来的に会社の株価が高額で多額の相続税が発生すると試算できている場合や、後継者が親族以外の第三者になる場合には有効な方法です。

できれば、まず計画的にでき比較的管理が簡単な暦年贈与から検討し、自社の株価に応じて新・事業承継税制の適応を検討するのが良いでしょう。

また、こちらの記事「M&Aは事業承継・引継ぎ補助金を活用して負担軽減!具体事例で分かりやすく解説」で、事業継承・引継ぎに関する補助金を分かりやすく解説しています。あわせてご参考になさってくださいね。

M&Aは事業承継・引継ぎ補助金を活用して負担軽減!具体事例で分かりやすく解説

この記事の監修者
山田 直輝
代表社員税理士公認会計士行政書士
2009年公認会計士試験に合格、その後、Deloite Touche Tohmatsu(有限責任監査法人トーマツ)に入所し、メーカー、サービス業、学校、商社等の上場一部企業の会計監査や内部統制監査を行う。監査班では、監査の主任業務を経験した。その後、アドバイザリー部門に部署異動をして、ベンチャー企業支援、賠償業務算定の構築や上場支援業務、企業リスクにおけるリスクマネジメント業務を行う。上場は、リクルートの上場経験を有する。2015年に独立して、ストラーダ税理士法人を設立。「敷居が高くて堅苦しい」税理士のイメージを払拭し、「初めての方でも馴染みやすい」税理士でいることをモットーにしている。趣味は、愛娘と遊ぶこと。
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